お酒を飲んだときの反応は、人それぞれ
お酒を飲んだときの反応には、はっきりとした個人差があります。
顔色ひとつ変えずに飲める人もいれば、
少量で顔が赤くなったり、
ビールをコップ半分飲んだだけで気分が悪くなる人もいます。
この違いの大きな要因が、血液中にたまる
「アセトアルデヒド」という物質です。
アルコールは体の中でどう分解されるのか
私たちが飲んだアルコールは、体内で次のように分解されます。
まず、消化管から吸収されたアルコールの約80%は、
アルコール脱水素酵素(ADH)によって
アセトアルデヒドに変えられます。
その後、アセトアルデヒドのほとんどは
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に分解され、
最終的に体外へ排出されます
この途中で生じるアセトアルデヒドは、
顔が赤くなる、動悸がする、気分が悪くなるといった
不快な症状の原因となる有害物質です。
鍵を握るのは「ALDH2」という酵素
アセトアルデヒドの分解に特に重要なのが、
2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)です。
ALDH2には遺伝子多型があり、
その違いによって、飲酒時のアセトアルデヒドのたまりやすさが大きく変わります。
※ADHにも遺伝子多型はありますが、
アルコールからアセトアルデヒドへの代謝には複数の経路があり、
ALDH2ほど強い影響はありません。
遺伝子多型とは?
遺伝子多型とは、
DNA配列にみられる個人差のうち、
集団の1%以上に存在する違いのことを指します。
一般に、
- 頻度が多い型:野生型
- 頻度が少ない型:変異型
と呼ばれます
ALDH2のタイプと飲酒反応
ALDH2には、次の2つの型があります。
- ALDH2*1:野生型(分解能力が正常)
- ALDH2*2:変異型(分解能力が低い)
人はこの遺伝子を2つ1組で持っているため、
組み合わせにより次の3タイプに分かれます。
- **ALDH21/1
正常型(分解能力が正常) - **ALDH21/2
低活性型(分解能力が低い) - **ALDH22/2
無活性型(分解能力がほとんどない)
顔が赤くなる人・気分が悪くなる人(フラッシャー)
ALDH2の活性が低い
ALDH2*1/*2(低活性型)の人が飲酒すると、
アセトアルデヒドが体内にたまり、
- 顔面紅潮
- 動悸
- 不快感
といった反応が起こります。
このような反応を示す人を
フラッシャーと呼びます。
ほとんど飲めない人
ALDH2*2/*2(無活性型)の人では、
ごく少量のアルコールでも強い不快感が生じ、
顔色が悪くなることもあります
飲酒による体への影響については、
検査値の変化も含めてこちらで解説しています
👉「γ-GTPが高いと言われたらまずやること」
日本人における割合
日本人では、
- 正常型
- 低活性型
- 無活性型
の割合は、
およそ 15:9:1 とされています。

「体質的に飲めない」というのは、
気のせいや甘えではなく、
明確な遺伝的背景があるということです。
遺伝子多型とアルコール依存症
この遺伝子多型は、
日常の飲酒量にも影響します。
低活性型の人は、
正常型の人に比べて飲酒量が少ないことが分かっています。
日本で行われた研究では、
- 一般集団:
ALDH2*2を1つ以上持つ人 約42% - アルコール依存症患者:
ALDH2*2を1つ以上持つ人 約12%
と、依存症患者では有意に少ないことが示されています。
このことから、
ALDH2*2はアルコール依存症を抑制する要因の一つ
と考えられています。
それでも注意が必要な点
一方で、ALDH2*2を持つ人が飲酒を続けると、
- 口腔がん
- 咽頭がん
- 食道がん
といった上部消化管がんのリスクが高まることが知られています。
喫煙が加わると、危険性はさらに上昇します。
また、同じ飲酒量でも、
低活性型ALDH2のアルコール依存症患者ほど
末梢神経障害や中枢神経系への影響が強いことも報告されています。
つまり、
顔が赤くなる人の飲酒は、量に関わらず臓器障害のリスクがある
という点には注意が必要です。
なお、この遺伝子多型と肝機能障害との直接的な関連は、
現時点では明らかになっていません。
地域差と「飲める体質」
ALDH2*1の割合が高い地域ほど、
フラッシャーが少なく「お酒に強い人」が多いと考えられます。
研究では、ALDH2*1の頻度が80%を超える地域として、
北海道、東北(福島を除く)、
栃木、埼玉、
高知、
福岡、熊本、鹿児島
などが挙げられています。
景気と飲酒量の関係
景気が悪化すると、
- 飲酒量が増え
- アルコール依存症患者が増える
という傾向が、統計的に示されています。
新型コロナウイルス流行以降、
生活環境の変化によって
飲酒量が増えた方も少なくないかもしれません。
お酒との上手な付き合い方
お酒は、
自分の体質を理解した上で、嗜むものです。
無理に飲む必要はありませんし、
「飲めない体質」は決して弱点ではありません。
お酒以外にも没頭できるものを見つけ、
心身の健康を大切にしながら、
前向きに日々を過ごしたいものですね。
最後に・・・
飲酒は体だけでなく、
心の状態・健康とも深く結びついています
特に、他人の評価やストレスを強く感じている方では、
飲酒量が増えやすい傾向があります
👉 「自分に対する評価が気になるとき」はこちら
ご自愛ください!
参考文献
廣 尚典, 樋口 進. 景気変動とアルコール症. 精神科診断学 2000; 11: 283–289.
眞先敏弘. 酒乱になる人、ならない人. 新潮社 2003

心と身体の健康のために

