「5パーセントの奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生〜」(2017年)は、
実話に基づいたドイツ映画です
主人公の青年サリーは、高校生のときに先天性の疾患が原因で網膜剥離を起こし、
視力の95%を失います
それでも彼は、幼い頃からの夢である
「ホテルマンになること」を諦めません
卒業後、視覚障害があることを隠しながら、
さまざまなホテルに応募していきます
心が疲れているときにお勧めの映画です
視覚障害と仕事という壁
サリーは持ち前の誠実さと努力を評価され、
ようやくとある高級ホテルで、障害を隠して見習い研修生として働く機会を得ます
もちろん、視力障害があることで越えなければならない高い壁があります
- 実技での失敗
- 周囲に気づかれないようにする緊張
- 自分自身への不安
いくつかの失敗の後、視覚障害は明るみになります
しかしながら、知識面や仕事への姿勢を高く評価され、
最終試験へと進んでいきます
結果がどうなるのかは、
ぜひ映画で確かめてほしいところです
映画を観て感じたこと
作中で、
視覚障害があると、就職先は
「コールセンターかマッサージしかない」
と言われる場面があります
日本でも、どこか似たイメージがあるだけに、
ドイツでも同じ状況であることに驚きました
映画では、ときどきサリーの視点での映像が映し出されます
視界の不確かさ、距離感の曖昧さがそのまま伝わり
観ている側は自然とサリーに感情移入してしまいます
サリーが落ち込めば、自分も沈み
サリーが喜べば、自分も嬉しくなる
ラストがハッピーエンドであることもあり、
観終わったあとに、静かな前向きさが残る映画でした
機微考察:ヒトの能力とは何か
視力を失う、歩行能力を失うなど、
現代社会にはさまざまな障害を持つ人がいます
しかし、脳全体の能力そのものが低下するわけではない
と考えられています
たとえば、視覚からの入力が減ると、
後頭葉の視覚野の活動は低下します
すると、
- 聴覚・側頭葉(耳)
- 嗅覚・嗅皮質(鼻)
- 触覚・頭頂葉(指先)
といった他の感覚を司る領域の活動が高まりやすくなると推測されています
大脳皮質の一部分の活動性が上がると周囲の活動性が抑制されます
同様に、一部分の活動性が下がると周囲の活動性が上昇する傾向があります
視覚障害のある方の耳が非常に敏感であったり、
点字を読む能力が高いと言われるのは、
こうした脳の可塑性(適応能力)によるものです。
科学的な裏付け
「視力障害者では、失われた視力の代わりに
聴覚が発達するのだろうか?」
この問いに対する研究があります
幼児期以前(2歳以前)に視力を失った人たちは、
5歳以降に視力を失った人や、
視力が正常な人と比べて、
より優れた聴力を示したことが報告されています
(Gougoux et al., 2004)
前向きさを伝えることの難しさ
「何かを失っても、別の能力が伸びるかもしれない」
そう前向きに伝えたい気持ちは、
とても自然なものだと思います
実際に、患者さんにそう励ましたいときが時々あります
ただし、現実には
その言葉を伝えること自体が難しい場面も多くあります
医師と患者の関係では、
励ましが「考えの押し付け」になってしまうこともあります
友人という立場でも、
相手がまだ受け入れられていない状態であれば、
反感を招くことさえあります
受け入れが進んだあとでは、
その言葉自体が、あまり意味を持たないこともあります
いちばん大切なこと
いろいろ考えるよりも、
- 相手の立場を理解しようとすること
- 無理に言葉を与えようとしないこと
- そばに寄り添う姿勢を大切にすること
それが、
良好な人間関係を築く一番の近道なのかもしれません
👉 良好な人間関係を築く3つの習慣はこちら
文献
Gougoux et al. Pitch discrimination in the early blind. Nature 2004; 430(6997): 309
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